別府倫太郎が13歳のときに創刊した文芸誌
『文藝雪月花 第二号 旅』
— 「はじめに」 別府倫太郎 —
外には水が流れていた
雪が消えたところから発せられる
静かな展望をぼくは見守っていた
どんな川だろうと
そこに水が流れていることは
ぼくにとって何かをのこす
心地よいとも違う
そのかすかな抵抗を
ぼく自身の中に感じる
一つのものが流れていくことは
そこに一つの抵抗が生まれるということだ
書くということでも
考えるということでも
それは逆行しているようで
ながれに沿っているのだ
そこに本質をつかんだ時
そこにはふっとした怖さが生まれる
その考えが再び呼び起こされたような
そのところに
そこを見直させる力がある
すべてが堂々とできないような
そんな隠しようのない隠しごとを
表すというのが
書くということだ
変なことをぼくは言っているようだが
そこの小さな川を見て
そう思う
雪が消えた今
その雪の名残がそこの水に見られる
別府倫太郎
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『目次』
詩 「春のお彼岸」
日記 「おわりを告げる旅」
旅行記 「私のモンマルトル」
「伊豆日記」
詩 「あこがれ」
散歩日記 「浦和の記憶」
絵の頁 「二つの絵」
小説 「culpabilité 罪」
エッセイ 「じいちゃんバナナ」
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『文藝雪月花 第二号「旅」』増版のお知らせ
このたび、創刊号に引き続き、『文藝雪月花 第二号「旅」』を
増版いたしました。
『文藝雪月花』は十年前、
「とにかく別府倫太郎の文章を一冊の本にしたい」
という思いから始まった文芸誌です。
創刊号「雪」は、生み出すことそのものに没頭していました。
荒削りであっても、どうしても形にしたいという強い衝動と
エネルギーによって生まれた一冊でした。
そして、第二号「旅」は、生まれたものが居場所を得て、
さらに展開し広がっていくような一冊です。
旅先でペンを持った筆者が、
それぞれの土地で自らの内面へと潜っていきます。
当時は知人や出版関係者、作家の方々にお送りし、
折々に感想をいただいていました。
紙という媒体にこだわり、一冊ずつ手渡しで
届けるような思いでお送りしていました。
その頃は広くお届けすることができませんでした。
感性を評価の対象にすることへの戸惑いがありました。
また、作家が書いたものを守りたいという思いもありました。
書く人は世に出したいと願いながらも、その一方で怖さを抱えています。
それでも、作家は書き続けてきました。
時を経た今、作家が残してきたものをお届けすることにいたしました。
それは、一人でも多くではなく、一人の誰かに届けたいと思ったからです。
また、長い時間をかけて、感性は強いものであり、
消費されるものではなく、
守られていくものだと感じるようになったからです。
この一冊が、ひとりの方に届くことを願っています。
文藝雪月花編集者 別府マサ子
仕様:A4判 / インクジェットプリント
ページ数:全88ページ
初版発行:2016年5月23日
改訂版発行:2026年6月15日